うつ病

1. どんな病気?
うつ病になると、気分が憂うつとなり、意欲や元気がでなくなります。食欲がなくなったり、夜が眠れなくなることもあります。また、だるさや頭痛、めまいなどの体の症状が出ることもあります。

誰でも心配なことや嫌なことがあれば憂うつな気分になって元気がなくなります。こうした正常な心の変化とうつ病との違いとして、うつ病の場合は原因が漠然としていることが多く、良いことや楽しいことがあっても少しも気分が晴れません。そして、原因と思われる心配事が解決しても気分が良くならないのです。

原因がはっきりしていても、学校や会社、家事などの普段の生活に支障が出るほど具合が悪くなるようであれば、うつ病を疑った方が良いでしょう。また、あまり気分が憂うつではないのに「勉強や仕事に集中できずにミスが増えた」「体に色々な不調が出たので病院に行ったが異常がないと言われた」というときにも、実は背後にうつ病が潜んでいることが多いのです。まれではありますが、妄想があらわれることもあります。


2. どのくらい多い病気?
どのくらいの人がうつ病になるかは、調査によってばらつきがありますが、以前行われた調査1)では、うつ病になる割合は6.2%ですので、16人にひとりが経験するとても頻度の高い病気です。男性に比べて2~3倍女性に多く、子どもから高齢者まですべての世代で発病します。

1) 川上憲人ら.こころの健康についての疫学調査に関する研究.2007


3. どのように診断するの?
国際的な診断基準2)をわかりやすく改訂したものが表1.です。ポイントはこの表にあるような症状が2週間以上続き、これらの症状によって生活に支障をきたしているということです。また、うつ病のような症状が出る他の脳や体の病気がないかをチェックするために、血液検査(ホルモンなども)や脳の画像検査なども行います。

表1.うつ病(大うつ病性障害)の診断基準 (文献2より改変)
ほとんど毎日、
1.1日中、憂うつな気分が続く
2.1日中、物事に対して興味や喜びを感じなくなる
3.食欲がなくなって体重が減る(または食欲が増えて体重が増える)
4.眠れない(または眠りすぎる)
5.いらいらして落ち着かない、またはおっくうで動けない
6.疲れやすい、または気力がわかない
7.自分には価値がないと感じる、または自分を責める気持ちになる
8.考えたり集中することが難しい、または何かを決断することが難しい
9.死にたい気持ちになる、または自分を傷つけることを計画したり行動する

2)DSM-5精神疾患の分類と診断の手引き


4.どのような治療をするの?

うつ病の治療は、まずこころとからだを休める環境づくりと、カウンセリングや精神療法、そして必要があればクスリを使った治療をおこないます。主治医が休養が必要と判断した場合には、学校や仕事を休むための診断書を書くこともあります。精神療法は患者さんの症状や具合の悪さに応じておこないます。具合の悪さによっては、クスリを使った方が早く良くなることもあるので、「抗うつ薬」を使うこともあります。抗うつ薬の種類を表2.にまとめています。さらに必要な場合には、一時的に睡眠を補助するクスリや不安感や焦る気持ちを軽減するクスリを使うこともあります。

基本的に外来通院でこうした治療をおこないますが、非常に症状が重い場合や、自宅ではゆっくりと休養できない場合などは入院して治療することもあります。

死にたい気持ちが強くて危険な場合や、症状が長引いで食事もとれず、栄養状態が悪くなってしまった場合など、とにかく急いで症状を改善しなくてはならない場合や、色々な治療をしても良くならない場合には、全身麻酔をして「修正型電気けいれん療法」という治療をおこなうこともあります。

  

表2.抗うつ薬の種類と名前

種類 名前(一般名)
三環系 イミプラミン,クロミプラミン,アミトリプチリン,ノルトリプチリン,アモキサピン,ドスレピン
四環系 マプロチリン,ミアンセリン,セチプチリン
その他 トラゾドン
SSRI フルボキサミン,パロキセチン,セルトラリン,エスシタロプラム,ボルチオキセチン
SNRI ミルナシプラン,デュロキセチン,ベンラファキシン
NaSSA ミルタザピン

2021年2月26日 更新